業務委託で働くとき、「会社員のときにあった保険はどうなるのか」は誰もが一度は調べます。健康保険と年金は選択肢を比べれば決まりますが、労災保険だけは、そもそも入れるのかどうかが変わりました。
2024年(令和6年)11月1日から、企業などから業務委託を受けているフリーランスも、労災保険に特別加入できるようになっています。年間1万円ほどで、仕事中や通勤中のケガ・病気の補償が付く制度です。
この記事では、①労災の特別加入(対象・保険料・給付・申込先)②雇用保険との違い ③備え方を、実際の金額と手続きの経路まで整理します。
1. 結論——労災は入れる、雇用保険は入れない
| 制度 | 業務委託(個人事業主)の扱い |
|---|---|
| 労災保険(特別加入) | 入れる(2024年11月〜/従業員を使用しない方が対象) |
| 労災保険(通常の加入) | 入れない(対象は「雇用される労働者」) |
| 雇用保険 | 入れない(同上) |
| 健康保険 | 国民健康保険/任意継続/被扶養者から選択 → 業務委託の健康保険はどうする? |
| 年金 | 国民年金(第1号被保険者) → 業務委託の年金はどうなる? |
2. 労災保険の特別加入——2024年11月から対象が広がった
厚生労働省は、令和6年(2024年)11月1日から、企業等から業務委託を受けているフリーランスについて、業種・職種を問わず労災保険に特別加入できるようにしました。それ以前は一部の業種に限られていました。
対象になる人
対象は「特定受託事業者」です。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)に規定されている用語で、業務委託の相手方である事業者であって、従業員を使用しないものを指します。ひとりで受託して働いている方が該当します。
補償の範囲は、企業などから業務委託を受けて行う事業(BtoB)が中心ですが、同種の事業を消費者から委託されて行う場合(BtoC)のケガなども対象に含まれます。
IT関連の職種は、申込先が別になります
ここは間違えやすいので先にお伝えします。今回できた枠は「特定フリーランス事業」と呼ばれ、対象は「他に特別加入可能な事業または作業を除く」とされています。
IT関連の職種は、この「特定フリーランス事業」ではなく「ITフリーランス」の特別加入団体から加入します。
- 該当する職種の例:ITコンサルタント、プロジェクトマネージャー、システムエンジニア、プログラマ、サーバーエンジニア、ネットワークエンジニア、運用保守エンジニア、テストエンジニア、データサイエンティスト、アプリケーションエンジニア、Webデザイナー など
- こちらは令和3年(2021年)9月1日からすでに特別加入の対象になっています
申し込む前に、自分がどちらに当たるかを確認してください。厚生労働省のサイトに、事業・作業ごとの特別加入団体の一覧が掲載されています。
保険料——給付基礎日額から選ぶ
保険料は、給付基礎日額をもとに決まります。
- 給付基礎日額は 3,500円から25,000円までの16段階から選択
- ただし自由に選べるわけではなく、1日あたりの収入を基準に、所得水準に見合った額を選んで団体が申請し、都道府県労働局長が承認した額が給付基礎日額になります
- 年間保険料 = 給付基礎日額 × 365日 × 0.3%
厚生労働省のリーフレットの計算例です。
例:給付基礎日額10,000円を選択した場合の年間保険料
10,000 × 365 × 3/1000 = 10,950円(3/1000=0.3%)
同じ式で計算すると、主な水準はこうなります。
| 給付基礎日額 | 年間保険料 | 休業(補償)等給付(日額の60%) |
|---|---|---|
| 5,000円 | 5,475円 | 3,000円 |
| 10,000円 | 10,950円 | 6,000円 |
| 20,000円 | 21,900円 | 12,000円 |
| 25,000円(上限) | 27,375円 | 15,000円 |
※休業時は、上の60%とは別に特別支給金20%が上乗せされ、合わせて日額の80%が支給されます(日額10,000円なら1日8,000円)。
日額10,000円なら月あたり1,000円弱の負担です。実際の請求額は、申し込む特別加入団体にご確認ください。
受けられる主な給付
| 給付の種類 | 内容 |
|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 労災病院・労災指定医療機関で必要な治療等が無料で受けられる |
| 休業(補償)等給付 | 療養のため働けず収入がないとき、休業4日目以降、1日につき給付基礎日額の60%(特別支給金20%と合わせて80%) |
| 障害(補償)等給付 | 治ゆ(症状固定)後に障害が残ったとき、等級に応じて年金または一時金 |
| 遺族(補償)等給付 | 仕事や通勤が原因で死亡したとき、遺族に年金または一時金 |
| 葬祭料等(葬祭給付) | 31万5千円+給付基礎日額30日分、または給付基礎日額60日分のいずれか高い方 |
※出典:厚生労働省リーフレット「フリーランスの皆さまも、特別加入により労災保険の補償を受けられます!」(R6.12)
手続きは団体を通じて行います
個人で労働基準監督署に申請することはできません。 都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体に申し込み、団体が加入申請書等を所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出します。
3. 雇用保険は入れない——ただし受給資格が消えるわけではありません
雇用保険は、事業主に雇用される労働者を対象にした制度です。業務委託契約は雇用契約ではないため、どれだけ長く同じ企業の仕事を続けていても被保険者にはなりません。
ただし、会社員時代に積み上げた受給資格が消えるわけではありません。ここは期限があるので、退職前に押さえておいてください。
- 基本手当(失業給付)の受給期間の特例:離職後に事業を始めた方は、事業を行っている期間(最大3年間)を受給期間に算入しない特例を申請できます。申請期限は、事業を開始した日等の翌日から2か月以内です
- 教育訓練給付:在職者だけでなく離職者も対象です(離職日の翌日から受講開始日までが1年以内、など)
いずれも要件がありますので、ハローワークでご確認ください。
なお、業務委託と並行してアルバイトや契約社員などの雇用契約がある場合は、その勤務先で雇用保険の被保険者になっていることがあります。ご自身が被保険者かどうかは、勤務先またはハローワークで確認できます。
4. 仕事が途切れた期間にどう備えるか
失業給付をあてにできない前提で、実務的に選ばれている手段を3つ挙げます。
① 小規模企業共済
中小機構が運営する積立制度です。掛金は月額1,000円〜70,000円(500円単位)で、全額を課税対象所得から控除できます。共済金は退職・廃業時に受け取れます。
対象は、開業届を出して事業所得で確定申告をしている個人事業主です。会社と雇用関係があり給与所得を得ている方(会社員の副業として業務委託をしている方など)は加入できません。受け取り方(一括/分割)や税務上の扱いには要件があるため、中小機構のサイトでご確認ください。
② 就業不能保険・所得補償保険
病気やケガで働けない期間の収入を補う民間保険です。労災の特別加入は「仕事中・通勤中」が対象なので、私生活での病気やケガはカバーされません。そこを埋めるのがこの保険の役割です。免責期間や対象範囲は商品ごとに差が大きいため、条件を読んでから選んでください。
③ 仕事の切れ目をつくらない契約設計
3つ目は金融商品ではなく、契約の組み方です。契約期間が長く更新を前提にした案件を選ぶ、単発を並べるのではなく継続して稼働できる商流を持つ、紹介元を複数持つ——空白期間そのものをつくらない設計が、必要な現金クッションの厚みを決めます。
5. ダイブの場合
ダイブは、NTTドコモグループの業務を支える人材サービス企業です。ドコモグループの案件に、正社員としての常駐と、業務委託としての常駐の両方でご参画いただいています。
- 正社員として常駐する場合:雇用保険・労災保険・社会保険はすべて会社側で整います。この記事で整理した論点そのものが発生しません。
- 業務委託として常駐する場合:裁量と報酬水準を取りにいく働き方です。労災の特別加入や備えはご自身で設計いただくことになりますが、長期の継続案件が中心のため、案件の切れ目はつくりにくい環境です。
どちらが向いているかは、いま何を優先したいかによって変わります。迷われている段階でも構いませんので、一度ご相談ください。
まとめ
- 業務委託でも労災保険には入れます。2024年11月1日から、特別加入の対象になりました
- 給付基礎日額は3,500円〜25,000円の16段階。年間保険料は「日額×365×0.3%」で、日額10,000円なら年10,950円(月1,000円弱)
- IT関連の職種は「ITフリーランス」の特別加入団体から加入します(令和3年9月〜)。申込先を間違えないようご注意ください
- 手続きは特別加入団体を通じて行います。個人では申請できません
- 雇用保険には入れませんが、受給資格が消えるわけではありません。基本手当の受給期間の特例は事業開始から2か月以内の申請、教育訓練給付は離職者も対象です
- 労災の特別加入は「仕事中・通勤中」が対象です。私生活の病気・ケガは別途カバーが必要です
※本記事は2026年8月時点で公開されている公的資料にもとづいて作成しています。制度の詳細や最新の取扱いは、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク・中小機構の各サイトでご確認ください。個別の判断については、所轄の労働基準監督署や専門家にご相談ください。
出典・参考資料
- 厚生労働省「令和6年11月1日から『フリーランス』が労災保険の『特別加入』の対象となりました」
- 厚生労働省リーフレット「フリーランスの皆さまも、特別加入により労災保険の補償を受けられます!」(R6.12・PDF)
- 厚生労働省リーフレット「フリーランスの皆さまへ」(R6.12・PDF)
- 厚生労働省「令和3年9月1日から労災保険の『特別加入』の対象が広がりました」
- 厚生労働省「労災保険への特別加入」(特別加入団体一覧表)
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金」
- 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 制度の概要」
- 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 加入資格」
ダイブの募集ポジション(NTTドコモグループ駐在)
プロ人材として業務委託/正社員、2つの働き方で参画いただけます。現在の募集は次のとおりです。









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