業務委託の年金はどうなる?厚生年金との差と、付加年金・国民年金基金・iDeCoで埋める方法

正社員から業務委託に切り替えるとき、健康保険と並んで気になるのが業務委託の年金です。厚生年金から国民年金に変わることは知っていても、「将来いくら減るのか」「どうやって埋めればいいのか」まで具体的に把握している方は多くありません。

年金は、健康保険と違って結果が出るのが数十年先です。だからこそ後回しになりやすく、そして後回しにした分だけ取り返しにくくなります。逆に言えば、切り替えた最初の年に手を打っておけば、正社員時代と遜色ない備えをつくることもできます。

この記事では、2026年度(令和8年度)の年金額をもとに厚生年金との差が実際いくらなのかを示し、それを埋める3つの手段——付加年金・国民年金基金・iDeCo——を、併用の可否と限度額まで含めて整理します。2026年12月からiDeCoの枠が広がる改正も、業務委託の方に直接関係するため取り上げます。

なお、業務委託の社会保険の全体像(健康保険・確定申告・経費計上を含む)は業務委託と社会保険:知っておくべき賢い選択肢、退職の直後に決める健康保険の3択は業務委託の健康保険はどうする?任意継続・国民健康保険・被扶養者を2026年度の料率で比較で解説しています。本記事はそのうち年金にしぼって深掘りする内容です。


1. 業務委託になると年金はどう変わるのか

会社員は厚生年金保険の被保険者(国民年金第2号被保険者)です。業務委託として個人事業主になると、国民年金第1号被保険者に切り替わります。変わるのは次の3点です。

項目 正社員(第2号) 業務委託(第1号)
加入する年金 国民年金+厚生年金 国民年金のみ
保険料 報酬に応じて変動・会社と折半 定額・全額自己負担
将来の受給 老齢基礎年金+老齢厚生年金 老齢基礎年金のみ
上乗せの手段 企業年金・iDeCo など 付加年金・国民年金基金・iDeCo

重要なのは、厚生年金には「報酬比例部分」があり、業務委託にはそれがないという点です。会社員時代は給与が高いほど将来の年金も増える仕組みでしたが、国民年金は定額のため、報酬がいくら高くても受給額は変わりません。

ただし、これは裏を返せば上乗せの部分を自分で設計できるということでもあります。会社員は制度を選べませんが、第1号被保険者には後述する3つの手段が用意されています。

1-1. 保険料は定額——2026年度は月17,920円

国民年金保険料は年度ごとに改定され、2026年度(令和8年度)は月額17,920円です。報酬に関係なく定額なので、報酬が高い方ほど負担率としては軽くなります。

なお業務委託は雇用保険にも加入できません。失業給付という受け皿がなくなる点も、年金とあわせて頭に入れておく必要があります。


2. 数字で見る差——2026年度の年金額

では実際にどのくらい違うのか。2026年度(令和8年度)の金額で確認します。

2-1. 老齢基礎年金の満額

対象 月額 年額
昭和31年4月2日以後生まれ 70,608円 847,296円
昭和31年4月1日以前生まれ 70,408円 844,896円

これは40年間(480か月)保険料を納めた場合の満額です。2026年度は前年度から国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%引き上げられました。

2-2. 厚生年金のモデル年金と比べる

比較の目安として公表されているのが、標準的な厚生年金の受給額です。2026年度は月額237,279円(年額2,847,348円)とされています。ただしこれは前提条件のついた数字で、平均標準報酬45.5万円で40年間就業した場合の、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む金額です。単身の方の受給額ではない点に注意してください。

条件をそろえるため、夫婦2人がともに第1号被保険者で老齢基礎年金を満額受け取る場合を計算すると、70,608円 × 2人 = 月額141,216円です。同じ夫婦2人という単位で見ると、その差は月額およそ9.6万円、年額にしておよそ115万円になります。

この差が、報酬比例部分の有無によるものです。数十年にわたって受け取ることを考えれば、無視できない規模になります。だからこそ、上乗せの手段を早い段階で使うことに意味があります。

2-3. 「満額」は40年納めた場合の金額

ここまでの70,608円は、あくまで480か月(40年)すべて納付した場合の金額です。実際の受給額は納付済み期間に応じて決まるため、納付月数が足りなければその分だけ減ります。

重要なのは、この480か月は会社員時代の厚生年金加入期間と、業務委託になってからの国民年金の納付期間を合算して数えるという点です。40代・50代で業務委託に切り替える方の多くは、すでに20年以上の納付済み期間を持っています。ゼロから積み直すわけではありません。

納付済み期間 計算 老齢基礎年金の月額(目安)
40年(480か月) 満額 70,608円
38年(456か月) 70,608円 × 456/480 約67,078円
35年(420か月) 70,608円 × 420/480 約61,782円
30年(360か月) 70,608円 × 360/480 約52,956円

つまり業務委託の期間に納付を続けることは、そのまま将来の受給額に反映されます。逆に未納の期間をつくると、その月数分がここから差し引かれます。納付を止めないこと自体が、上乗せの手段と同じくらい効きます

なお、60歳の時点で480か月に届いていない場合には、任意加入という制度が用意されています。ご自身の納付済み期間は「ねんきん定期便」やねんきんネットで確認でき、届いていない見込みであれば年金事務所に相談する価値があります。


3. 埋める手段①付加年金——月400円で、2年で元が取れる

もっとも手軽で、費用対効果が明快なのが付加年金です。国民年金第1号被保険者と65歳未満の任意加入被保険者が対象で、国民年金保険料に月額400円の付加保険料を上乗せして納めます。

受け取れる付加年金の額は、年額=200円 × 付加保険料を納付した月数で計算します。ここが重要な点で、この式には期限がありません。

納付期間 納めた総額 受け取れる付加年金(年額) 回収にかかる年数
1年(12か月) 4,800円 2,400円 2年
10年(120か月) 48,000円 24,000円 2年
20年(240か月) 96,000円 48,000円 2年

納めた総額の半分を毎年受け取れる計算になるため、受給開始から2年で納付額を回収でき、それ以降は上乗せが続きます。月400円という負担の小ささを考えると、第1号被保険者になったら最初に検討したい選択肢です。

ただし1つ制約があります。国民年金基金の加入員は、付加保険料を納めることができません。後述する国民年金基金とは二者択一になります。


4. 埋める手段②国民年金基金——終身で受け取る型を選べる

国民年金基金は、第1号被保険者が老齢基礎年金に上乗せするための公的な制度です。掛金の上限は月額6万8,000円で、iDeCoにも加入している場合はその掛金と合わせて6万8,000円以内となります。

特徴は、終身で受け取る型を選べる点です。iDeCoは積み立てた資産を取り崩していく仕組みのため、長生きした場合に残高が尽きる可能性がありますが、国民年金基金の終身型はその心配がありません。

一方で、受け取る額があらかじめ決まっているため、運用によって増える余地はありません。受給額の確かさを取るか、運用による上振れを取るかという選択になります。前述のとおり付加年金とは併用できないため、そこも含めた判断が必要です。


5. 埋める手段③iDeCo——2026年12月から枠が広がる

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を出して運用し、原則60歳以降に受け取る制度です。第1号被保険者の場合、現在の拠出限度額は国民年金基金の掛金と合わせて月額6万8,000円です。

5-1. 2026年12月からの改正内容

この限度額が引き上げられます。2026年(令和8年)12月から、第1号加入者・第4号加入者の拠出限度額は、iDeCo・国民年金基金等の合計で月額7.5万円になります。現行の6.8万円から0.7万円の増額です。

時期 第1号加入者の限度額 年間の上限
2026年11月まで 月額6万8,000円 816,000円
2026年12月から 月額7万5,000円 900,000円

なお第1号加入者とは、国民年金第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、フリーランス、学生)を指します。業務委託として働く方はここに含まれます。この枠は国民年金基金の掛金と合算である点は改正後も変わりません。

5-2. 掛金が全額所得控除になる

iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象です。つまり将来の備えをつくりながら、その年の税負担を軽くできます。控除による効果は所得税率と住民税率によって変わるため、ご自身の所得で試算してください。

業務委託は、経費計上や青色申告特別控除と組み合わせて課税所得を調整できる立場にあります。iDeCoの枠を使い切ることは、その設計の一部として考える価値があります。


6. 【比較】3つをどう組み合わせるか

3つの手段には、併用できる組み合わせとできない組み合わせがあります。

組み合わせ 可否 補足
付加年金 + iDeCo 併用できる 付加保険料は月400円、iDeCoは限度額の枠内
国民年金基金 + iDeCo 併用できる 掛金は合算で限度額まで
付加年金 + 国民年金基金 併用できない 国民年金基金の加入員は付加保険料を納付できない

6-1. 判断の順番

迷ったときは、負担の小さいものから順に検討すると整理しやすくなります。

  • まず付加年金:月400円で、受給開始から2年で回収できる。判断に時間をかける必要が小さい
  • 次にiDeCo:掛金が全額所得控除になり、2026年12月から枠も広がる。運用商品は自分で選ぶ
  • 終身での受け取りを重視するなら国民年金基金:ただし付加年金は使えなくなるため、そこを含めて比較する

報酬が読みやすい案件で長く働ける見通しがあるなら、iDeCoの枠を早い段階から使い切っていく設計が取りやすくなります。逆に収入の振れ幅が大きい時期は、掛金を無理のない額から始めて後で増やすほうが続けやすくなります。


7. 手続きと注意点

退職して業務委託になるとき、年金まわりでやることは次のとおりです。

時期 やること
退職後すみやかに 市区町村の窓口で国民年金第1号被保険者への切替を届け出る
同時期 付加保険料を納付する場合は申し出る
収入が整ってから iDeCoまたは国民年金基金の加入を検討する

7-1. 納め忘れを防ぐ

会社員時代は給与から天引きされていたため、意識せずに納付が続いていました。第1号被保険者になると自分で納める形に変わります。納付しない期間があると、その分だけ将来の老齢基礎年金が減ります。

口座振替や前納を使えば、納付を仕組みに載せられます。前納には割引もあるため、手続きの手間を一度かけておく価値があります。

7-2. 収入が落ちた時期の選択肢

案件の切れ目などで納付が難しい時期があれば、未納のまま放置せず、保険料の免除や納付猶予の制度について年金事務所に相談してください。未納と免除では将来の受給額の扱いが異なります。手続きをしておくかどうかで結果が変わります。


8. ダイブの業務委託という選択

ここまで見てきた上乗せの手段は、どれも継続して掛金を出せることが前提になります。iDeCoも国民年金基金も、拠出を止めれば積み上がりも止まります。つまり年金の設計は、報酬の水準と案件の続きやすさに支えられています。

株式会社ダイブは、NTTドコモグループの業務を支える人材サービス企業です。約60名のプロフェッショナル人材がNTTドコモに常駐し、業務委託と正社員の両方のかたちで参画しています。

ダイブが扱うNTTドコモグループの案件では、職種に応じて次の月額単価が見込めます。

職種 月額単価(税別) 年間換算
PM/PMO 80万〜120万円 960万〜1,440万円
マーケティング 70万〜100万円 840万〜1,200万円
エンジニア 70万〜100万円 840万〜1,200万円
オペレーション 50万〜70万円 600万〜840万円
営業 45万〜60万円 540万〜720万円

業務委託の年収レンジは600万〜900万円が中心帯で、同職種の正社員(400万〜700万円)と比べて高い水準にあります。iDeCoの年間上限90万円(2026年12月以降)を満額拠出したとしても、年収600万円なら15%、年収900万円なら10%という位置づけです。しかもこの掛金は全額が所得控除になるため、実際の手取りへの影響はこの割合より小さくなります。

加えて、ダイブが扱うのは長期にわたる大手企業の案件です。案件が継続しやすいため、拠出を長く続けやすいという特徴があります。年金の上乗せは積み上げた期間がそのまま結果になるため、この続けやすさは設計上の土台になります。

業務委託として参画したうえで、後から正社員として登用される道も用意しています。厚生年金に戻る選択肢を残しながら、業務委託の期間を過ごすこともできます。


9. まとめ

  • 業務委託になると厚生年金から国民年金(第1号被保険者)に変わり、報酬比例部分がなくなる
  • 2026年度の国民年金保険料は月額17,920円、老齢基礎年金の満額は月額70,608円(昭和31年4月2日以後生まれ)
  • 夫婦2人という同じ単位で比べると、厚生年金のモデル年金との差は月およそ9.6万円(モデル年金は平均標準報酬45.5万円・40年就業という前提つき)
  • 埋める手段は付加年金・国民年金基金・iDeCoの3つ
  • 付加年金は月400円で、受給開始から2年で回収できる(年額=200円×納付月数)
  • 付加年金と国民年金基金は併用できない。iDeCoはどちらとも併用できる
  • 2026年12月から、第1号加入者のiDeCo・国民年金基金等の合計枠が月6.8万円→7.5万円に拡大
  • 上乗せは積み上げた期間がそのまま効くため、切り替えた最初の年に手を打つことが結果を左右する

業務委託の年金は、放っておけば厚生年金との差がそのまま残ります。ただし第1号被保険者には会社員にはない選択肢が用意されており、枠は2026年12月にさらに広がります。制度を知って早く使い始めた人ほど、その差を埋められるという構造になっています。

※本記事の年金額・保険料・限度額は2026年(令和8年)7月時点で公表されている内容にもとづいています。制度は改定されるため、実際の手続きの際は日本年金機構・国民年金基金連合会・厚生労働省の最新情報をご確認ください。

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