業務委託の健康保険はどうする?任意継続・国民健康保険・被扶養者を2026年度の料率で比較

正社員から業務委託に切り替えるとき、いちばん現実的な悩みになるのが業務委託の健康保険です。年金や確定申告は後からでも整えられますが、健康保険だけは退職の直後に決めなければならず、しかも選択を先延ばしにすると選べる幅が狭くなるという性質があります。

業務委託の健康保険には、大きく3つの選択肢があります。どれを選ぶかで年間の負担は十数万円単位で変わり、そして「どれが得か」は年収によってはっきり逆転します。感覚で選ぶ場面ではなく、数字で決められる場面です。

この記事では、2026年度(令和8年度)の最新の料率と、2026年4月から変わった要件をもとに、①任意継続 ②国民健康保険 ③家族の被扶養者 の3つを具体的な金額で比べます。あわせて、退職直後にやるべき手続きの順番と期限も整理します。


1. 業務委託の健康保険は「3つの選択肢」から選ぶ

会社を辞めると、それまで加入していた健康保険の資格を失います。ただし日本には国民皆保険の仕組みがあるため、無保険になることはありません。業務委託として働く場合、次の3つから選ぶことになります。

選択肢 加入先 保険料の決まり方 使える期間
①任意継続 退職前と同じ健康保険 退職時の標準報酬月額 × 料率 最長2年間
②国民健康保険 お住まいの市区町村 前年の所得 × 自治体ごとの料率 制限なし
③家族の被扶養者 家族が加入する健康保険 追加負担なし 収入要件を満たす間

3つのうち②の国民健康保険には期限がなく、いつでも加入できます。一方で①の任意継続には「退職日の翌日から20日以内」という期限があり、これを過ぎると二度と選べません。つまり実務上は、「まず任意継続を選ぶかどうかを20日以内に判断し、選ばないなら国民健康保険へ」という順番になります。

なお、業務委託そのものの社会保険の全体像(年金・確定申告・経費計上を含む)は、業務委託と社会保険 ― 正社員を辞めたら保険はどうなる?で解説しています。本記事はそのうち健康保険にしぼって深掘りする内容です。


2. 選択肢①任意継続——「上限32万円」が効く2年間

任意継続は、退職後もそれまで加入していた健康保険にそのまま残る制度です。協会けんぽの場合、要件と期限は次のとおりです。

  • 加入要件:退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること
  • 申請期限:退職日の翌日から20日以内(20日目が土日祝の場合は翌営業日まで)
  • 加入できる期間:2年間

2-1. 保険料は「退職前の2倍」になる

会社員のあいだ、健康保険料は会社と本人で半分ずつ負担していました。退職するとこの会社負担分がなくなるため、任意継続の保険料は退職時の健康保険料の2倍になります。ここだけを見ると割高に感じますが、任意継続には負担を抑える仕組みが組み込まれています。

2-2. 標準報酬月額には「32万円」の上限がある

任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額 × お住まいの都道府県別保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)」で決まります。ここで効いてくるのが上限です。協会けんぽでは、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合、32万円で計算します

つまり月給が40万円だった人も、60万円だった人も、任意継続の保険料は同じ32万円ベースで頭打ちになります。退職前の給与が高かった人ほど、この上限の恩恵が大きくなるという構造です。

2-3. 2026年度(令和8年度)の実額で計算する

2026年度の協会けんぽの料率は、健康保険料率が都道府県ごとに定められ、そこに全国一律の子ども・子育て支援金率0.23%が加わります。さらに40歳から64歳までの方は介護保険料率1.62%(全国一律)が上乗せされます。

主な都道府県の2026年度の健康保険料率は次のとおりです。

都道府県 健康保険料率 +子ども・子育て支援金 +介護保険料率(40〜64歳)
東京都 9.85% 10.08% 11.70%
神奈川県 9.92% 10.15% 11.77%
千葉県 9.73% 9.96% 11.58%
埼玉県 9.67% 9.90% 11.52%
大阪府 10.13% 10.36% 11.98%
福岡県 10.11% 10.34% 11.96%

これを使って、東京都にお住まいで退職時の標準報酬月額が32万円以上だった方の任意継続保険料を計算すると、次のようになります。

年齢 計算式 月額 年額
40歳未満 320,000円 × 10.08% 32,256円 387,072円
40〜64歳 320,000円 × 11.70% 37,440円 449,280円

40代・50代の方は介護保険料率が加わるため、東京都で年間約45万円が任意継続の上限ラインになります。ここが重要な点で、報酬がどれだけ増えても、任意継続を続けているかぎり健康保険料はこの金額を超えません

2-4. 「2年で終わる」ことを前提に設計する

任意継続は2年間で資格を失います。そのほか、次の場合も途中で資格がなくなります。

  • 就職して他の健康保険の被保険者資格を取得したとき
  • 保険料を納付期限までに納付しなかったとき
  • 後期高齢者医療制度の被保険者資格を取得したとき
  • 任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき

注意したいのは納付期限を過ぎると資格を失う点です。うっかり納め忘れると、その時点で国民健康保険へ切り替えることになります。口座振替や前納を使って、納付を仕組みに載せておくと確実です。


3. 選択肢②国民健康保険——前年の所得で決まる

国民健康保険は市区町村が運営し、前年の所得をもとに保険料が計算されます。任意継続と違って加入期限はなく、いつでも切り替えられます。

3-1. 退職1年目が高くなりやすい理由

保険料の算定基礎が「前年の所得」であることが、そのまま落とし穴になります。退職した年は正社員時代の給与が前年所得として反映されるため、業務委託に切り替えた1年目の国民健康保険料は高めに出ます。

逆に、業務委託2年目以降は前年の事業所得(売上から経費を引いた額)が基礎になるため、経費を適切に計上していれば保険料は下がっていきます。「1年目は任意継続、2年目以降は国民健康保険」という組み合わせが合理的になりやすいのは、この時間差があるためです。

3-2. 金額は自治体で変わる——必ず住所地で確認する

国民健康保険料は、所得に応じた「所得割」と、加入者数に応じた「均等割」などを組み合わせて算定します。この料率や算定方式は自治体ごとに異なります。同じ年収でも、住んでいる市区町村が違えば保険料は変わります。

そのため国民健康保険については、全国共通の金額を示すことができません。お住まいの自治体のウェブサイトにある保険料試算ページか、国民健康保険の窓口で、前年所得を伝えて試算してもらうのが確実です。多くの自治体は退職者向けの試算に慣れており、その場で概算を出してもらえます。

3-3. 国民健康保険にも上限がある

国民健康保険にも、年間の保険料の上限にあたる「賦課限度額」が設けられています。2025年度(令和7年度)の賦課限度額は109万円で、その内訳は医療分92万円(基礎賦課額66万円・後期高齢者支援金賦課額26万円)、介護分17万円です。

任意継続の上限(東京都・40〜64歳で年間約45万円)と比べると、国民健康保険の上限はかなり高い位置にあります。高収入になるほど任意継続の上限の価値が上がるのは、この差によるものです。


4. 選択肢③家族の被扶養者——2026年4月から要件が変わった

配偶者や家族が会社の健康保険に加入している場合、その被扶養者になるという選択肢もあります。被扶養者は保険料の追加負担がありません。ただし収入要件があり、業務委託として本格的に働く場合は要件を超えることがほとんどです。副業規模で始める段階に限られる選択肢と考えてください。

4-1. 収入の基準額

協会けんぽの被扶養者認定では、年間収入の基準額は次のとおりです。

  • 原則:130万円未満
  • 60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者:180万円未満
  • 19歳以上23歳未満(配偶者を除く):150万円未満

加えて、被保険者と同一世帯にある場合は被保険者の年間収入の2分の1未満であること、別世帯の場合は被保険者からの援助額より少ないことが条件になります。

4-2. 2026年4月1日からの変更点

協会けんぽでは、2026年(令和8年)4月1日から、任意継続被保険者の被扶養者となるための要件が変わりました。変更後は「労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であり、かつ、ほかの収入が見込まれないこと」が求められます。

業務委託として働く場合、報酬は労働契約で定められた賃金にはあたりません。ご家族の扶養に入りながら業務委託で本格的に稼働する、という設計は現実的ではなくなっていると考えておくのが安全です。判断に迷う場合は、ご家族が加入している健康保険の窓口に、業務委託である旨を明示して確認してください。


5. 【比較】年収別に、どれを選ぶべきか

ここまでの数字を整理すると、判断の分かれ目がはっきりしてきます。東京都在住・40〜64歳のケースで整理します。

状況 向いている選択肢 理由
退職前の給与が高かった(標準報酬月額32万円超) 任意継続 32万円で頭打ちになり、年間約45万円で上限に達する
業務委託1年目で、前年は正社員だった 任意継続 国民健康保険は前年の給与所得で算定されるため高く出やすい
業務委託2年目以降で、経費計上により所得が下がっている 国民健康保険 算定基礎が事業所得になり、任意継続の定額を下回りやすい
退職前の給与が低め(標準報酬月額32万円未満) 両方を試算して比較 上限の恩恵が働かず、自治体によって逆転する
副業規模で、年間収入130万円未満に収まる 家族の被扶養者 追加の保険料負担がない

5-1. 「2年で切り替える」という発想

任意継続の期間はちょうど2年です。そして国民健康保険は業務委託2年目以降に下がりやすい。この2つを重ねると、多くの方にとって現実的な組み合わせが見えてきます。

  • 1〜2年目:任意継続で、上限のある定額の負担にする
  • 3年目以降:任意継続の期間満了に合わせて国民健康保険へ切り替える

この流れなら、収入が読みにくい立ち上がりの2年を定額でしのぎ、事業として整ってきた3年目以降は所得に応じた負担に移行できます。ただし前提となる金額は住所地とご自身の標準報酬月額で変わるため、必ず両方を試算したうえで決めてください。


6. 手続きの実務——20日以内が分岐点

退職前後にやるべきことを、時系列で整理します。

時期 やること
退職が決まったら 直近の給与明細で標準報酬月額を確認し、任意継続の保険料を計算する
同時期 お住まいの自治体で国民健康保険料を試算してもらう
退職日の翌日から20日以内 任意継続を選ぶ場合は申請する(この期限を過ぎると選べない)
退職日の翌日から14日以内 国民健康保険を選ぶ場合は市区町村の窓口で加入手続きをする
退職後すみやかに 国民年金第1号被保険者への切替手続きをする

健康保険と国民年金は別の手続きです。健康保険をどれにするかにかかわらず、厚生年金から国民年金への切替は必要になります。2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は月額17,920円です。あわせて、月額400円の付加保険料を納めると将来の老齢基礎年金を増やせる仕組みも用意されています。

6-1. 空白期間をつくらない

退職日の翌日から、健康保険の資格は切り替わります。手続きが遅れても加入義務そのものは退職日の翌日にさかのぼって発生するため、後から届け出れば保険料はさかのぼって請求されます。手続きを遅らせても負担が減るわけではありません。

この期間に医療機関を受診すると、いったん全額を自己負担し、後日還付を受ける形になります。手元の資金繰りにも影響するため、退職前に選択肢を決めておくことをおすすめします。


7. ダイブの業務委託という選択

健康保険の負担を計算したうえで最後に効いてくるのは、そもそもの報酬水準です。健康保険料に上限がある以上、報酬が上がるほど、保険料が手取りに占める割合は下がっていきます

株式会社ダイブは、NTTドコモグループの業務を支える人材サービス企業です。約60名のプロフェッショナル人材がNTTドコモに常駐し、業務委託と正社員の両方のかたちで参画しています。

ダイブが扱うNTTドコモグループの案件では、職種に応じて次の月額単価が見込めます。

職種 月額単価(税別) 年間換算
PM/PMO 80万〜120万円 960万〜1,440万円
マーケティング 70万〜100万円 840万〜1,200万円
エンジニア 70万〜100万円 840万〜1,200万円
オペレーション 50万〜70万円 600万〜840万円
営業 45万〜60万円 540万〜720万円

業務委託の年収レンジは600万〜900万円が中心帯で、同職種の正社員(400万〜700万円)と比べて高い水準にあります。仮に東京都在住・40代で任意継続を選び、健康保険料が年間約45万円だとすると、年収800万円の方にとっては報酬の6%弱という位置づけになります。

加えて、ダイブが扱うのは長期にわたる大手企業の案件です。案件が継続しやすいため、単発の仕事を積み重ねる働き方と比べて、収入の見通しを立てやすいという特徴があります。健康保険や年金を自分で設計するうえでは、この見通しの立てやすさが判断の土台になります。

業務委託として参画したうえで、後から正社員として登用される道も用意しています。まず業務委託で関わり、働き方や環境を確かめてから正社員を選ぶ、という順番も取れます。


8. まとめ

  • 業務委託の健康保険は任意継続・国民健康保険・家族の被扶養者の3択
  • 任意継続の申請期限は退職日の翌日から20日以内。過ぎると選べなくなる
  • 任意継続は標準報酬月額32万円が上限。東京都・40〜64歳なら年間約45万円で頭打ち
  • 国民健康保険は前年所得で決まるため、退職1年目は高く、2年目以降は下がりやすい
  • 多くの場合、1〜2年目は任意継続、3年目以降は国民健康保険という組み合わせが噛み合う
  • 2026年4月から任意継続被保険者の被扶養者要件が変わり、業務委託で扶養に入る設計は取りにくくなった
  • 金額は住所地と標準報酬月額で変わる。必ず両方を試算してから決める

業務委託の健康保険は、制度を知らないまま流れで決めると負担が大きくなり、知っていれば選べる範囲が広がります。退職の20日前後という短い期間に判断が集中するため、辞めると決めた時点で計算を済ませておくことが、いちばん確実な備えになります。

年金の側は、厚生年金との差が実額でいくらになるのか、そして付加年金・国民年金基金・iDeCoでどこまで埋められるのかを業務委託の年金はどうなる?厚生年金との差と、付加年金・国民年金基金・iDeCoで埋める方法で整理しています。健康保険と年金はどちらも退職の直後に切り替える手続きなので、あわせて確認しておくと判断を一度に済ませられます。

※本記事の保険料率・保険料額は2026年(令和8年)7月時点で公表されている内容にもとづいています。国民健康保険料は自治体ごとに異なり、制度も改定されるため、実際の手続きの際は協会けんぽ・お住まいの市区町村・日本年金機構の最新情報をご確認ください。

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